団塊ジュニアのジャカルタ駐在日記

2014年からジャカルタに単身赴任している団塊ジュニアの男です。典型的日本企業で新卒から20年以上過ごした私に、ジャカルタで起きた変化、また高度成長を続けるインドネシア社会で感じることを徒然と、少し哀愁を持って綴って行ければと思います。また今熱いフィンテック分野にも関心を持っています。

人事部に決められる人生なんてもう嫌だ!

団塊ジュニア世代の読者貴兄の中には、新卒からずっと同じ企業で働いている方も多いかと思います。

 

そうした「ジャパニーズサラリーマン」の場合、昇進(人事考課)、人事異動は大変な関心事かと思います。私もご多分に漏れずそうです(過去形に早くしたい)。

 

本当は違うってわかっていながら、昇進スピードや花形部署に異動できるかが、自分の価値を決めるってどっかで感じさせられてしまってきたような気がします。

 

特に、社宅なんかに住んでいると、社宅の奥様も「あそこのパパ、最年少課長らしいよ。すごいね」とか言っているのを良く聞きます。

 

そしてそれを決めているのが、人事部。いきおい花形部署であることが多く、その部員は俗に言うエリートです。。。

 

その昔は、某人事課長の息子が「うちのパパ、人事課長なんだぞ、すごいだろ」なんて言っている例もあったと聞いたことがあります。。。狂ってますね。。。

 

まあ、高度成長時代の遺物としての終身雇用制の名残りってことは分かっているんですが、なかなかにこの仕組みが巧妙です。

・入社時は誰もが社長になれるという可能性を抱かせる⇒実際は5~10年に1人(0.1%くらいの確率)

・ある程度の年齢になるまで(ひどいとこでは転職がきつくなる30代半ばまで)はっきりした評価が分からないようにして、みんなに希望をもたせる⇒そうやって働かせる

・様々な評価項目を設けるが、昇進に最も影響する一番大切な人事考課項目は本人に開示しない。。。

・人事部による定期的な人物評価のウェイトが高い、いわゆる「印象人事」

といった感じでしょうか。

そして多くの人達が踊らされがちなのが、「自分の評価は3割増し」という人間の悲しい性。。。どうしたって淡い期待を抱いてしまうものです。

 

いやいや何だか切なくなってきてしまいました。。。

 

 でも、ここインドネシアに来ると、いやはや、そんなことに囚われていた自分の愚かさに気づきます。

 

インドネシアでも人事評価はもちろんありますが、まず、「人事部」が力を持っているなんてことはありません。それから評価が非開示ということもありません。直属のボスが人事権を持っていて、それはそれで問題がある場合もあるんですが、救いなのは、各業界にしっかりした転職市場があること。

つまり、ボスと合わなくて、自分の望むような人事評価を得られない場合、同じ業界の同じ職種で転職すればいいんです。

 

私もこちらの会社で働いてから数年経ちますが、その間多くの仲間が同じ業界内に転職していくのを見てきました。さらには、出戻りなんかも少なくありません。

 

日本からの駐在員の立場からすると、優秀な人は同じ会社でずっと働いてほしいのですが、個人の立場から見ると、なんとも彼らの方が健全な気がしてなりません。

 

日本では、パワハラやセクハラが社会問題になっていますが、これもある意味、転職できずに同じ会社にとどまり続けなくてはならない、日本の労働市場の固陋性にあるのではと思います。

 

ともあれ、「働く場所」も「住む場所」も「仕事の内容」も「収入」も人事部に決められる人生なんてもう嫌ですね。

 

人生の主導権を自分に取り戻すために皆さん頑張りましょう!

日本企業とインドネシア企業~幸せ度の圧倒的違い~

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ここインドネシアでは、

「今日がこの会社での最後の日になります!お世話になりました」

といって部屋に挨拶に来る人(若手が多い)が、金曜日や月末最終日の夕方に多い。

 

私も、こちらに来たてのころは、

「えーそうなの?いきなりじゃん」とか「もっと早く言ってよ」、「これからどうすんのよ?」

などなどのコメントを発していたが、最近では全く驚かなくなって、

「あーありがとうね。次の会社決まったの?All the best ね!」

とか言った言葉がスラスラ出てくるようになった。

 

こうした状況だから、2~3年もこちらに駐在していると、一気に社歴でいうと中堅になっていく。こちらで転職する人の多くの行き先は、大体同じ業界の他社。

ITならIT、リーガルならリーガルと同じ分野でステップアップを図っていくケースが圧倒的に多い。

うちの社長(CEO)も、

「こっちはでは一回CEOになったら、会社が変わってもずっとCEOだから。出来れば転職のたびに会社の規模が大きくなればいいよね」

と言っていた。

 

日本企業にお勤めの方は良く分かると思うが、日本ではこうした同業界への転職は、特に伝統的な業界では、まだまだタブー視されている。

そういうことをすると、

「あいつは敵に魂を売りやがった」とか「この裏切者め」とか

色々と陰で言われるような風潮がまだまだある。

 

こういうことをインドネシアの人に話すと、大抵びっくりされる。

「そーなんだ。そりゃあ窮屈だねえ」

なんて言葉はよく聞いた。

 

こういう日本の事情の背景には、新卒一括採用を前提とした終身雇用制度の中で、会社が各人の最大のアイデンティの拠り所となっている現状がある。

「うちの会社」という言葉に象徴されるように、昔のサムライにとっての「わが藩」みたいな存在に会社がなってしまっている。

特に我々団塊ジュニアはそうした感覚を、(多少の違和感はありながらも)身に着けてきた(植え付けられてしまった)最後の方の世代だと思う。

それでも、高度成長が続き、ポストも給料も増え続ける時代はそれでもよかったんだろう。

 

私も会社に入った時は、そんな時代のいい話を沢山聞いた。。。

曰く

「やあ、昔はさ、4時に会社終わってさ、よく会社の女の子とボーリングとかビアガーデンとかいって遊んでたよ。海水浴もよく行ったなあ」とか

「バブル時代は経費があり余っててさあ。経費でクルーザー買ったりする豪の者もいたよ」

とか。。。

 

しかし、そんな恩恵も受けることなく、給料やポストの上昇も思ってたほどではなく会社人生を過ごしてきた方が多いのではないだろうか。。。

 

そんな中で、転職にもリスクが伴い、嫌々新卒で入った会社に居続けている方も少なくないのではないかと思う。まあ、会社がずっと安泰なだけよし、としなければならないんでしょうが。

 

ただ、日本でも、もっと健全な同一業界内の転職市場が出現してもいいと思う。

特に最近は、職場の人間関係に悩みながらも、転職リスクにおびえ、メンタル疾患になってしまう方も非常に多い。特にパワハラ。。。これについては、個人的には犯罪だと思っており、ビジネスマンとして絶対にやってはいけないことで、結果責任を負うべきものだと思ってる。

 

ひるがえって、インドネシア。非常に健全である。。。みんな幸せそうである。。。

 

人間関係にちょっと煮詰まったり、ポストについてガラスの天井を感じだりしたら、軽々と会社を変えていく人が多い。おまけに、数年後には、笑顔で出戻ってくる人までいる。

 

経営陣としては、コア人材がころころ変わってしまうのは頭が痛いことなのだが、個々の人間としてみれば、「彼らはなんて幸せそうなんだ」と思ってしまう。

人との対立を(少なくとも表面的には)好まない、インドネシア人らしいと言ってしまえばそれまでだが。。。

 

また、語弊を恐れずに言えば、インドネシア企業ではポジションが上に行けば行くほど、幸せ度が低下するような気もする。

 

とある同僚の役員が、月曜日の朝に、オフィスボーイ達を見ながら、ぽつりといった一言が忘れらない。

「彼ら、本当に楽しそうだよなあ。月曜からキャッキャ笑って、のんびりと歩いてて。。。」

 

給与が彼の100倍もあるその役員が言った言葉は何だかとてもシュールだったけど、ひとつの真実を語っていたような気もする。

まあ、今日もインドネシアの人達を見習って、笑顔で「Tidak Apa apa (No problem)」の精神で、頑張りましょう!